【レポート】兵庫と東京の事業者をつなぐ、ビジネスマッチング交流会
9月24日、東京・飯田橋にて兵庫県から「ITカリスマ」と認定された小田垣栄司氏のコーディネートによる、ビジネスマッチング交流会が開催されました。この交流会は、兵庫県でキーマンとなる事業者と東京で活躍する事業者とのネットワークを構築し、各社の事業拡大のきっかけづくりをするために開催されたもの。会場に集結した事業者のみなさんは、小田垣氏からの声かけだけではなく、この日、会場でコーヒーをふるまってくれた「ASHIYA CITY COFFEE(アシヤシティコーヒー)」の中川伸一さんや「起業プラザひょうご姫路」の運営者である「NPO法人姫路コンベンションサポート」の理事長・玉田恵美さんが、これまで出会ってきた事業者に声をかけたことで実現した交流会でした。
中川さんは、神戸新聞社で広告営業担当や同社が運営をしていた神戸三宮にあるコワーキングスペース「120 WORKPLACE KOBE」や「ANCHOR KOBE(アンカー神戸)」でマネージャーを務めるなど、さまざまな事業者との接点がある方です。現在は、地域活性化に貢献する取り組みとして公園にキャンピングトレーラーで出没してコーヒーやジュースを販売する「ASHIYA CITY COFFEE(アシヤシティコーヒー)」のオーナーとして活動しています。また、玉田さんはホテル業界を経て、姫路市役所に嘱託社員として入庁して行政イベントを手がけるなどの経験をされ、NPO法人姫路コンベンションサポートを設立してからは、地域の交流の場を作ったり、地域のハブとなる施設の運営を受託するなど、まちづくりに寄与する取り組みをされています。
「私たち3人が推す事業者のみなさんが集まったこの機会に、ぜひみなさんのビジネスにつながる場にしていただけたら嬉しい」と小田垣氏からの言葉を皮切りに、参加者がそれぞれ自社のサービス紹介や課題点をシェアしていきました。
最初に紹介されたのは、約20年前から体験ギフトの企画、販売を手がけている「Sow Experience(ソウ・エクスペリエンス)」。同社を代表して参加した今沢さんは「体験をプレゼントされた人は、これまで興味のなかったものに触れるきっかけになります。企業は偶発的なマーケティングができるんです」と語気を強めます。誰かの初めての体験として価値あるものに昇華することで、企業は新たな顧客を獲得するチャンスにもなるため、商品の可能性を広げていくきっかけになるユニークなサービスです。
姫路市から参加したのは小川農園。代表の小川さんは妻がイタリア人であったことやイタリアでの暮らしからヒントを得て、米農家として農業の6次産業化に挑戦しています。米粉を使った生パスタの製造・販売をする他、農園直営のイタリアンレストランの運営を通して、姫路から全国各地へと米だけでなく農業の魅力を届けています。商品や取り組みをより多くの人に認知していく方法や農福連携(障害者が農業分野で社会参画をする取り組み)の推進も模索しているという話がされました。
メディア分野からはPR会社のパイオニアである共同ピーアール株式会社も参加されていました。参加した長尾さんは「ニュース性のある情報同士を掛け合わせ、それぞれの価値を高められるような編集をしていきたい」と話します。進行役の小田垣氏は、「メディア編集者が探している情報に合わせたメッセージ性を考えることも世に広めていく上では重要」と、改めてメディアの生かし方について事業者にメッセージを投げかけました。
続いて「SEO対策でビジネスを加速させたい事業者にぜひ知っていただきたい方です」と紹介されたのは、株式会社Kyriosの代表で現役東大生の中島さん。過去に制作したポータルサイトを売却した経験もあるSEO対策のプロフェッショナルです。「インターネットの検索で上位に表示されるためには、単に良質な記事を作るだけでなく、実業を伴っていることが評価されています」と最近の検索エンジンの特徴を話してくれました。メディアを作りたい、サービスや商品の認知度を高めたい事業者にとって、とても興味深い話でした。
株式会社ココピアは、圧倒的な戦略を持って事業内容を記事化させ、Google検索エンジンからの流入に貢献するWEBマーケティング支援事業を行っています。同社は障害を持つ人の就労支援を行う会社。現在国内3か所に事業所を構え、営業担当が施策設計を行い、障害者スタッフが実働で活躍しています。代表の森島さんは障害を持つ兄を見て「障害のレベルに応じて知的生産性の高い仕事を任せることで障害者本人の自己肯定感を高めることや、仕事の領域を広げられるようにしたい」という想いを持って事業をされています。
続いて、姫路市に本社を構え電子部品の製造を行っている神田工業株式会社。ものづくり企業として培った技術を生かしてメーカーになる道を模索し、loTデバイスや空中ディスプレイの開発なども手がけています。約8年前、代表取締役の高島さんは別事業として、甲冑をミニチュア化させてボトルにかぶせる「ボトルアーマー」を商品化。職人による手づくりの「ボトルアーマー」は空港の免税店などで主に外国人に人気なのだそう。好きな言葉や模様を飾れる「マイボトルアーマー」も商品化し、贈答品など「ボトルアーマー」の可能性を探るべく、今回の交流会に参加されたのだそうです。
142年の歴史を誇る神戸市の「ナガサワ文具センター」は、社名にある文具だけにとどまらず、オフィスレイアウトの企画から施工までを手がけるなど、幅広く事業を展開しています。「サラリーマンとして会社の事業や雇用を守れるような仕事をしていきたい」と働く想いを語ってくれたのは社員の菅野さん。縦横無尽に動きながら、新たな事業や取り組みを次々と生み出しています。来年、「神戸インク物語」というご当地インクシリーズの販売が開始されるそうです。面白いこと、新しいことに挑戦したいという情熱を参加者たちは受け取ったはず。1万社を超えるという同社のネットワークを生かした共創もいろいろできそうな予感がします。
兵庫県を中心に、留学生の移住・定住促進につなげる取り組みとして、留学生が在学中から企業で働ける人材マッチングプラットフォームを運営している株式会社huoidea(ヒューポディア)の奥島さん。国内の大学で学んだ後、留学生の6割程が母国などに帰国する現状があることから、優秀な外国人人材と国内企業が接点をもてる機会を増やしたいと事業を推進しています。これからサービスを拡大させていくにあたり、企業としての認知度をもっと高めていきたい想いから本交流会に参加したそうです。人材不足や採用に悩む事業者にとって、優秀な人材を獲得する選択肢が増えたのではないでしょうか。
同じく人材分野で活躍されている、株式会社ジンザイベースの中村さんは、東京を拠点に教育・就労・定着の3つの領域で、外国人人材と受け入れ企業のトータルサポートを行っています。在留資格「特定技能」を持つ外国人材を、介護や外食、宿泊といったサービス業の企業に紹介するほか、エンジニア人材をIT企業とマッチングしています。中村さんは自治体向けにマッチングイベントの開催や企業内定後のサポートなどを行うサービスも展開。地方における定住人口増加にも寄与できる取り組みもしています。地域の特性を理解しながらサポートしてくれる存在は地方企業にとって心強いはずです。
NPO法人ディーセントワーク・ラボの代表理事である中尾さんは、社会福祉士であり、社会福祉学の博士でもある福祉の専門家です。福祉施設がつくる小物ブランド事業をはじめ、企業を対象とした障害者雇用によるコンサルティング事業などを展開しています。企業にとっても働きやすい場を作り、障害者も求められる人材となり良いチームづくりができるようにしていきたい」と中尾さん。障害者の雇用をしてどのようなサポート体制を整えればよいか悩んでいる事業者は一度ご相談してみると、よい方法が見つかるはずです。
ラストを飾ったのは、電力小売事業を行う東京・目黒区のエッセンシャルエナジー株式会社です。代表の岩瀬さんは、電気の使用量を解析して一人で暮らす高齢者の見守りを行う「見守り電気」というシステムを開発。解析によって認知症や熱中症などの症状を判定する優れたシステムです。さらに、同社は兵庫県と養父市ITカリスマにも採択され、養父市で「見守り電気」を通じてシルバー人材が独居高齢者に電話確認をして見守るサービスも行っており、シニア就労の可能性も追求されています。「見守る電気のプラットフォームを活用したエコシステムの形成に関心ある方たちを探しています」と岩瀬さん。今後さらに全国各地へと「電気」を通じた見守りが加速していきそうです。
1社1社の取り組みを聴いていた兵庫県の担当者は「東京一極集中を日々感じてはいますが、地方にも面白い企業がたくさんあります。ぜひ本日のこの場を共創のきっかけの場としていただき事業拡大につなげていただけたら嬉しいです」と締めくくりました。
交流会終了後も会場内では、事業について意見を交換し合う参加事業者のみなさんの姿が印象的でした。「自社がコラボレーションをするならどんなことができるだろうか」そんな視点を持って熱心に聴いていたからこそ、この熱気は生まれたのだろうと思います。この場に集まったからこそ生まれた出会いやつながりが今後どのようにカタチとなっていくのか、今後の展開に期待が高まります!
文/草野明日香 写真/林杏衣子