【レポート】DRONE HYOGO ミートアップ~ドローンで越える!イノベーションの壁~

( Records )
2024.10.15

8月27日、東京・有楽町にあるスタートアップやその支援者が交流するプラットフォーム「Tokyo Innovation Base」で、「DRONE HYOGO ミートアップ ~ドローンで越える!イノベーションの壁~」が開催されました。

兵庫県ではドローンを活用した新しいビジネスモデルの確立を目指し、過去5年間で50件以上の実証試験を支援してきました。このイベントは支援を通して見えてきたドローンの可能性や、新たな挑戦を紹介し、さらに最前線で活躍するドローン事業者によるピッチとプログラムを加えた内容盛りだくさんのミートアップです。

当日は台風接近に伴う悪天候の中での実施となりましたが、ドローンビジネスを検討されている方やドローン事業を展開する会社とつながりたい方など、多数が来場。改めて、ドローンへの関心の高まりが感じられました。

ミートアップ冒頭は、兵庫県によるドローンの可能性が伝えられました。「ドローン市場は提供するサービスによって大きな伸びしろがあります。兵庫県がコーディネートをすることで新たなビジネスのきっかけを与えていきたい」と事業者を後押しする想いが伝えられました。

続いて、公益財団法人新産業創造研究機構(以下、NIRO)の研究開発部門を担当する箙(えびら)一之氏による過去の実証事業事例が紹介されました。NIROは兵庫県や神戸市、地元の大手企業が設立した学術研究機関で中小企業支援や産業振興を目的に活動をしていて、ほぼエンジニアで構成されているという全国でも珍しい組織です。兵庫県はNIROとタッグを組み、ドローンの産業振興や企業支援、企業マッチング、コーディネートを行ってきました。

その中で過去に行われたさまざまな実証実験によって、実用化に向けた動きが加速していることが伝えられました。

例えば、ハチ駆除のドローン。

「人を介さずに安全に駆除をする」ことを目指して誕生したバキューム装置搭載のドローンで、ドローンに搭載した掃除機でハチを吸引する仕組みになっています。実験によって安定して蜂の巣へのコンタクトができるとわかり、ついに来年度中にサービスを開始する予定だそうです。

他にも、鉄道部門では保守点検において安全かつ効率的に洗掘(せんくつ)調査や補修剤の吹き付け作業を行うドローンの開発に向けた実験、物流部門では海上を横断するフードデリバリーサービスの需要や可能性を探る実験が行われるなど、産官が連携しながらさまざまな業界でドローンの活用の検討が進んでいます。

箙氏は「ドローン市場は法整備も進み技術も年々向上していることから、様々な分野にて関心が高まっていると感じています。このミートアップを通して、ご自身の立場からどのように活用できるかを考えてみてほしい」と参加者に言葉を投げかけました。

商品化や収益化に向けた大きな一歩として重要なのが実証実験であると理解ができたところで、兵庫県の「ドローン社会実装促進実証事業」に採択された4社によるピッチが行われました。

1社目は、愛知県で主に物流や測量、インフラ点検、災害対応などで活用できる産業用ドローンの製造・販売などを行っている株式会社プロドローン。

橋梁下で風速10mの中を飛行させた経験や自動配送ロボットと連携した配送無人化につなげるドローン配送システムの実証、さらに空中飛行機能と水中潜航機能を持ち、モバイル通信ができるスマートドローン「水中合体ドローン」の開発など、これまでの作業を安全かつ効率的にしてくれる新しいドローンを次々と生み出しています。

2社目は、点検や物流用ドローンの運用支援を中心にドローンのコンサルティング事業を展開するセブントゥーファイブ株式会社。

同社は試作機の開発をはじめ、システム構築、運用する仕組みづくりの支援までトータルサポートを提供しています。また、「日本にドローン産業をつくる」ことを目指して、サービサーとして実証実験にも積極的に参画しているほかドローンの利活用を進めるためにドローンスペシャリスト養成のためのスクールも運営しています。

3社目として登壇したのは、ドローンショーで一躍有名になった株式会社SkyDrive。

ドローンショー事業の他に、空飛ぶクルマの開発や30kg以上の重量物を運搬できる物流ドローンの開発と運用事業を展開しています。2024年には新たに空のエンターテイメントとして、ドローンショーの事業を開始。その背景には人々にとってドローンを身近な存在にすることで、ドローンの社会受容性を高めていきたいという想いがあると伝えられました。

最後に登壇したのは、KDDIのスピンオフベンチャーとして2022年に設立されたKDDIスマートドローン株式会社。

同社は用途に応じた機体の提案やモバイル通信・運行管理システムの提供など、ドローンの導入から運用までをトータルでサポートしています。兵庫県との取り組みとして、複数のドローンを同時に運航するためのシステムの実証事業や線路直上を低空で(地上から3m)遠隔自動飛行させる鉄道点検の実証試験、「水中合体ドローン」をプロドローンと共同開発するなど多数の先進的な実証が生まれています。

ドローンの実証実験の事例やNIROの取り組みを知ると、兵庫県には事業者の想いをスピーディーにカタチにしていこうとする土壌や気概があるとわかります。飛躍的な成長の可能性があるスタートアップ企業への支援が手厚いのも、兵庫県の特徴のひとつ。

プログラムの最後は、兵庫県のスタートアップ支援施策の紹介がされました。兵庫県のビジネスコーディネーターを務める小田垣栄司氏が登壇して、民間の視点でビジネスをする上で兵庫県の魅力を語ってくれました。小田垣氏はWEBマーケティングやシステム開発を手がける株式会社ノヴィータの創業者であり、連続起業家、エンジェル投資家でもある方です。2018年から兵庫県の「ITカリスマ」として活動し、2025年大阪・関西万博のフィールドパビリオンの企画委員も務めています。

兵庫県では、スタートアップの成長フェーズに応じた施策をさまざまなプレイヤーと連携して展開しています。起業家やスタートアップ創出・成長に向けて支援を行う会員制インキュベーション施設「起業ぷらざひょうご」などの拠点提供や、神戸市や民間企業などの官民連携ファンド「ひょうご神戸スタートアップファンド」、事業所開設の支援として3年間で最大1,300万円を補助する「ひょうごイノベーション拠点開設支援」で資金面のサポートもしています。

さらに、スタートアップの海外展開を支援するアクセラレーションプログラム「SDGsチャレンジ」や県内自治体の課題にスタートアップのもつ技術で解決を図る実証支援プログラムの「ひょうごTECHイノベーションプロジェクト」などスタートアップの成長期もサポート。その他、アントレプレナーシップ教育を行って起業への関心度を高める「ひょうご起業ゼミ」、兵庫県と大阪府で共催する学生や若手起業家を対象にしたビジネスプランコンテストの開催など、あらゆる角度からビジネスを通して社会課題を解決しようとするスタートアップの支援を行っているのです。

そうした中で、兵庫県内の企業とのビジネスマッチングやイノベーション創出を加速させるために企業に寄り添ってサポートする人の存在も重要です。そこで兵庫県ではIT企業誘致・ビジネス創出コーディネーターやオープンイノベーションアドバイザーを民間から登用しています。小田垣氏もキーパーソンの一人です。

小田垣氏は、一時は絶滅したコウノトリやトキが兵庫県豊岡市で野生復帰したことがわかる、まちの光景を写真で示しました。「失われた種を復活させ、かつて当たり前にあった自然を取り戻せたのは、単に空間を作っただけではなく鳥たちが生活できる日常を作り上げることができたから。私たちは地球や自然の技術を上手に利用して産業をつくってきた歴史があるのです」と小田垣氏。失ったものを取り戻したり、よりよい日常を作ったりするために、技術の生かし方は重要だと説明します。

「日本古来のものをどのようにして科学に転嫁させていくのか、その支援を兵庫県はしています。兵庫県をぜひPoC(新しい技術や手法、アイデアなどに対して実現可能か目的の効果や効能が得られるかを確認する実験的に行う検証工程)の場所として捉えてみてほしいです」と締めくくりました。

本イベントを通して見えてきたのは、兵庫県は技術の新しい使い道を模索して未来を切り拓こうとする企業にとって、有益な時間を過ごせる場所であるということ。「ドローン」を生かしたビジネスはこれからますます加速していくことでしょう。さまざまな分野でどれだけいろんなコトが起こっていくのか、兵庫県で行われる取り組みにぜひ注目してみてください。

ドローンによる集合写真の撮影が行われました