地域資源の価値を育み、人を呼ぶエリアマネジメントで丹波篠山市福住を稼げるまちに!

( Records )
2023.01.18

「ローカルPRプランナー。」社名である株式会社Local PR Planの由来にもなった、安達鷹矢さんの職業だ。学生時代のアルバイトで学んだPR(パブリック・リレーションズ)や、会社員として身につけたECコンサルティング、感銘を受けた社団法人のエリアマネジメント手法を活かし、安達さんが目指すまちづくりは、いわば「稼げる場所」づくり。例えば、宿場町福住には人材として移住開業者の流入を促し、里山集落後川(しつかわ)では農業中心の営みをコンテンツとして外資獲得をサポート。それぞれの地域が持つ魅力を最大限に活用し、集落の総所得アップを目指している。そんな安達さんが大切にしているのは、地域とのコミュニケーション。ひとりの住民として日役や会合には積極的に参加し、オフィスを構えるのは、地元の人々が大切に守る旧小学校を活用したコミュニティ施設の元音楽室。兵庫県IT戦略推進事業による「IT事業所開設支援」を上手に利用しながら、事業を加速・拡大につなげる、安達さんにお話をうかがった。

株式会社Local PR Plan
【事業内容】地域の個性を基軸にしたPR事業計画と実行
地域総合計画(エリアマネジメント「宿場町福住」「里山集落後川」)
【所在地】〒669-2513 兵庫県丹波篠山市福住1355
【連絡先】080-4024-2072 【代表者】代表取締役 安達鷹矢

安達鷹矢
大阪府高槻市出身。大学を卒業後、楽天グループ株式会社勤務を経て、2011年、丹波篠山市に移住し一般社団法人ノオトに入社。契約期間終了後、NPOに所属し兵庫県・京都府広域連携プロジェクトのPR推進業務、有馬温泉で宿泊施設と地域づくりを学んだ後、フリーランスとして丹波市の移住定住促進事業、WEBを中心とした地元企業のPRコンサルティング等に従事しながら、ボランティアとして福住の移住促進活動を始める。2017年、株式会社Local PR Planを設立。セレクトショップ「Littleaf」、シェアハウス、シェアオフィス、一棟貸し宿「NIPPONIA 後川 天空農園」の経営の他、福住地区の移住コーディネートなど、ITを中心とした地域PRとエリアマネジメントに取り組んでいる。

移住先で始めたのは、まちづくりボランティア

移住後に始めた「日本酒BAR Hatsu.ne」

「篠山城跡が、宿泊施設になったらおもしろいよね。」

丹波篠山市の集落で、古民家再生事業に取組む一般社団法人ノオト(以下、ノオト)。その代表の言葉に、「広告を売っている場合じゃない!」と思ったんです。勤務先にすぐ退職を申し出て、2か月後には、ノオトへ転職するため丹波篠山市に移住しました。

当時、ノオトは限界集落の活性化プロジェクトに取り組んでいました。私も、地域資源を発信することに興味がありましたが、プロダクトそのものに魅力がなければ、いくら発信しても意味がないとも思っていました。

ノオトは、古民家再生という手法や表現も含め、本当に価値のあるものに価値づけをしていました。表現の力を借りて魅力的に見せたものではない、いわば「ウソじゃないプロダクト」をつくっているところが、いいなと感じたんです。

集落でNPOを立ち上げて利益を生み出し、保全費も人件費も賄ったり、Uターンで戻ってくる人のためにフィールドを整えたり、ノオトが取り組んでいる事業には、圧倒的な社会的意義を感じました。プロダクトそのものの良さまで、自分の手で形にできる仕事がしたいと思っていた私には、とても魅力的だったんです。

ノオトに入社後は、福住にオープンするイタリアンレストランを担当。自治会への説明会を開いたり、改修工事のワークショップを企画し、地域の人たちに参加を呼びかけたりしていました。

その後、NPO職員としての広域観光PR業務や、有馬温泉での修行期間を経て、フリーランスとして地元企業のECサイトのコンサルティングを行い生活していましたが、「仕事をしなきゃ収入がなくなる」という不安に駆り立てられるようになりました。そんな状況が嫌になり、いっそ所持金をゼロにしてしまおうと、預金残高も含めすべて寄付してしまったんです。

当時は車で寝泊まりしていたので、家賃はいりません。近所のおばちゃんが野菜をくれたり、誰かがごちそうしてくれたりして、何とか死なずに生きられたのですが、さすがにこれは人に迷惑をかけるなと。それで、最低限自力で生きられる金額はいくらかを考えたところ、年収が80万円あれば生きていけるなと思ったんです。それで、死なないなら、「お金のために仕事をするのはやめて、自分がやりたいことや面白いと思えることをやろう。」と、たっぷりあった時間を使い、「趣味」として福住の移住促進活動に関わり始めました。移住希望者に空き家を紹介したり、改修工事の手配を手伝ったりしていたんです。

福住のまちづくりに関わるうちに、いろいろな人が活動に予算をつけてくれるようになり、「趣味」から「事業」になっていきました。例えば、エリアマネジメント事業に取り組む株式会社NOTEの福住エリアマネージャーや、戦略的移住モデル推進事業での福住地区移住コーディネーターなどです。 そうした事業を通じ、私が目指してきたのは「地域よし、移住者よし、観光客よし、店もよし」という、全体が最適化されたまちのモデルづくり。その拠り所となったのは、丹波篠山市への移住後に最初に関わったお二人の存在です。

歴史文化、地域の営み、先人の想いをつなぐ本物のストーリー

一人は「その土地の歴史文化資産を尊重したエリアマネジメントと、持続可能なビジネスの実践」という経営理念を掲げるノオトの代表。もう一人は、「温泉街全体の集客力をアップし、まちとしての売上げを高めていく」という発想を学んだ有馬温泉の旅館経営者。お二人との関わりは、今の私の財産になっています。

福住の歴史文化資産を尊重したエリアマネジメントで、福住のまちとしての売上を生む――。まちの全体最適化とは、そういう芯があるまちづくりのことです。上手なプロモーションで人を呼べても、プロダクト自体が良くなければ、誰も来なくなってしまうのが残念な観光PR。ストーリーにうそがないことで、「このまちは本物だ」と感じてもらえると思っています。

例えば、丹波篠山市の建築事務所に就職した青年は、弊社のシェアハウス住まいを経て、私と同じ自治会の一軒家に暮らしていますが、古民家再生に携わる建築士を目指し、建物の持つ文化的な背景や地域の営みを大切にしようとしています。

先祖が想いを込めて建て、何代にもわたって守り抜いてきた古民家のように、地域で守られてきた資源や、その資源を後世に残し続けてくれた人たちに思いを馳せ、感謝ができる人に来てほしい。ただ自分たちが幸せであるために、先祖や地域が大切にしてきた資源を利用したいだけの人には、福住に移住してほしくないと思っているんです。

そんな福住への移住者の方々は、この10余年で約100人を超え、35組ほどが開業しました(2022年11月現在)。

移住開業者の多さは、外部から地域に入りやすい環境も手伝っています。一つは、過疎化が進む状況に危機感を抱いた福住の人たちが、自ら地域の協議会を立ち上げ、移住者の受け入れも含めたまちづくりの構想を持っていたこと。もう一つは、宿場町の名残とオープンな雰囲気を残した旧商店街だったまちに、新しいお店がまっさらな状態で出店できたこと。 そして、やはり本物のストーリーづくりへの想いに、共鳴してくれたことだと思っています。その取組の一つが、2020年から自社が手掛ける一棟貸しの宿です。

わずか8軒で400年間営み続ける集落を、人が集まるコンテンツに!

山すそに広がる棚田の中に、ぽつんと一棟の宿が建っています。昔から「原(はら)8軒」と呼ばれ、江戸時代からずっと8軒だけで、息をするように営みをつないでいる原集落で、弊社が経営する一棟貸の宿泊施設です。

「NIPPONIA 後川 天空農園」と名付けた宿のメインコンテンツは、営みが残っている地域に住民が何気なくいる環境です。例えば、宿への細い道でお客さんが脱輪すれば、集落のおじさんが助けに来てくれる。バーベキューをしていると、「どこから来たの?」と話しかけてくれる。

「これ、美味いぞ」と言って、おじさんがくれた木の実を、「あの実は何だったんだろう」と思い出せる旅は、絶対に楽しいはずです。そうした本物の非日常があるコンテンツを、磨きあげていきたいと思っています。

ある日、そんな弊社の宿に、ミシュラン二つ星を獲得した、芦屋にある京料理店のシェフが泊まりに来てくれ、新しいメニューの開発拠点として、集落に加工拠点をつくり、さらにはご自身が住む家を建ててくれることになったんです。弊社の宿とシェフの拠点とで、集落で採れるお米や農作物を、提示された倍以上の値段で買い取り、集落ごと所得を倍増させようと考えています。最終的には、Uターン予定の方と一緒に、集落で会社を経営することが理想。一度は集落を出た親族が、「仕事があるから、ふるさとに帰れる」という環境をつくりたいんです。

この宿の他にも自社事業として、ウェブサイトやECショップなどの制作、コンサルティング、マーケティング事業。福住でのセレクトショップやシェアハウスの経営。さらに2022年4月にスタートした、シェアオフィスの経営に取り組んでいます。

事業を加速化! IT事業者に選ばれるまちをつくる「IT事業所開設支援」

廃校となった小学校の音楽室を改装

シェアオフィスは、2020年から始まった戦略的移住モデル推進事業のスタート時に、IT事業者が集まれる場所として、コツコツと自己資金で改修する予定のスペースでした。実は、会社を立ち上げて3年が過ぎていたうえ、場所も用意していたことが、「IT事業所開設支援」の申請条件に当てはまらないだろうと、思っていたからです。

でも、「シェアオフィスを始めるタイミングが“開業”です。それまでは“準備”なので、ぜひ申請を。」と、当時の担当者がアドバイスをくださったおかげで、利用することができました。オフィスの改修工事を一気に進めることができ、シェアオフィス開設のスピードアップにつながりました。

コロナ禍以降、オンラインが浸透したことで働き方も変わりました。福住のWi-Fi環境は、都市部とほぼ変わりません。そのうえ、空間が広く家賃が安い! 例えば、バックオフィスの業務をオンラインに切り替え、50人くらいの部署単位でこちらへ移転すると、経費を抑えられるうえ、仕事の効率も上がると思います。実際に、こちらの地域に点在している空き家を改修して社員の滞在場所を用意し、弊社のシェアオフィスで仕事をするという、国土交通省によるワーケーション推進事業の、モデル実証事業も福住で進行中なんです。

福住をはじめ丹波篠山市が、こうしたIT事業者に選ばれる場所になるためには、生活面におけるインフラが整備されていることが大切です。快適な住まいが安く借りられる、食品や生活必需品をすぐ購入できる、おいしいコーヒーやランチの店がある、足りないものはオンラインで取り寄せができるなど、日々の暮らしに不便を感じさせない環境を整えること。私はそれを、移住開業者の誘致をつないで実現させようとしています。

100組の移住開業者と共に、10万人の経済圏をつくろう

目標は、100組の移住者が福住で開業すること。そして、それぞれが年間1,000人のお客様を呼べるよう、ITでサポートすることです。

さらに、ものづくりに取り組む職人さんたちを、オンライン上でバックアップする組織をつくりたいと思っています。例えば、「料理に集中したいけれど、経理もしなくちゃいけない」ととまどうシェフは、会計ソフトの管理を代行してくれる人とつながれる。代行事業者は、副業的な報酬、もしくはシェフの料理チケットや福住の農家の野菜を、定期的に受け取れるというような仕組みです。オンラインの特徴を活かした支援ができればと思っています。

そうしたオンラインを上手に使うには、使いこなせる人とつながることが大切です。福住のまちづくりを面白いと思ってくれる専門家とコラボして、新しいサービスやサポートをつくることこそ、私たちが取り組むべきことだと思っています。

そのコラボ先の一つが自治体です。丹波県民局では、局長さんが「まちの全体最適化のためには何が必要か」という視点に立ったアドバイスをくださいます。世の中の大きな流れを広い視野で捉え、その流れを福住の地域に落とし込むにはどうすればいいか――。頭を切り替え、新しい情報を探すきっかけをいただいています。

地域活性化というと、外部から人を集め、地域の人口を増やすことに尽力しがちです。しかし、自分の力でお金を生み出せる人が移住してこそ、地域は発展します。福住に来て、福住にしかない産業を活かし、どうやって利益を生み出せるものを育めるか。移住者の方々と一緒に考えながら、10万人の経済圏をつくりあげ、まち全体を稼げる場所にしていくつもりです。

事業計画は相談しよう!「IT戦略推進事業 IT事業所開設支援」

使いやすい補助金でした。だからこそ、より多くの人に知ってもらう工夫が必要だと感じます。申請前の私のことを思い出しても、事業者にも情報を手に入れるためのアンテナを張る努力をする必要とメリットがあると思います。

また申請時には、まず県の窓口に相談することをお勧めします。「自分だけの力で書きあげて、提出しなくてはいけない」と思いがちですが、相談しても大丈夫! 内容が伝わりやすい書き方や、補助金の趣旨と合っているかどうかなど、書き方をアドバイスしていただけます。

文/内橋 麻衣子 写真/林 杏衣子